シロとクロとその間の世界

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【松本清張の本】守りたいものが大きすぎる

ゼロの焦点松本清張新潮文庫)読了した。

 

時代によって正しさの基準は微妙に変わってくる。

 

皆が生きるためだけに、生活のためだけに必死で毎日を生きていた時代もある。

暗い雰囲気から何とか立ち上がって生きて行こうと、みんなで頑張っていた時代もある。

あとから思い出せば後悔するようなことでも、時代の風潮や雰囲気に流されざるを得ないこともある。

 

読み始めたとき、犯人フラグはどこにも立ってなかった。私は読んでいる途中までずっと犯人に気が付くことはできなかった。

むしろ別の人物を犯人だと思って読んでいた。主人公の禎子が犯人に気が付き始めたタイミングで、私もやっと気が付くことができた。

 

そして、犯人が分かってラストを迎えたとき、「犯人が分かってスッキリした!」という気持ちには決してなれなかった

それよりも、目の前が真っ暗になる感じがした。犯罪者ではあるけれども、犯人を責めきれないなんともやりきれない気持ちになった。犯人が過去にしたことは、時代のせいだとも思えるからだ。犯人が今の生活を守りたいと思った気持も強く理解できるからだ。

 

禎子が結婚した相手・鵜原(うはら)は、過去のことではあるがものすごい秘密を抱えた人物であった。新婚ほやほやの彼女がこのような事件に巻き込まれてしまったのも、また悲劇であると思う。

犯人が犯行に至るまでのストーリーとは別に、禎子と鵜原のストーリーとしてとらえても、なんとも切ない話だと思う。

鵜原は本当に禎子と幸せになりたいと願っていたと思う。彼が禎子と結婚するまでの過去を思うと、彼は全てリセットして禎子と幸せになろうと考えていたはずだと思える。

だからといって、禎子が犯人を完全に責められるかと言えばそんな気もしない。

禎子はこのあと、どうやって立ち直り生きていくのか。それを思うとかなり気が重くなる。幸せになれるための要素は、ほとんど抹消されてしまっている。それでも夫や犯人の抱えていた重荷を今度は禎子が背負って生きていかなければいけない。

結婚してまだ間もない相手のために、こんな重荷を背負わなければならなくなってしまった彼女に心から同情する。

でもそれは過去の時代を生きてきた人々が背負っていた重荷―悲しみや、後悔―を、忘れないように受け継いで生きていかなければならないというメッセージだと解釈することもできる。